強力な攻撃陣を擁し、最大の宿敵である隣国出身の名将を招聘しても、頂には届かなかった。準決勝の消極的な采配は、大きな波紋を呼んだ。スリーライオンズが勝ち切れない原因を、技術と精神の両面から分析する。(原題:[ドイツ人監督の蹉跌]イングランドが破れない「壁」の正体)
「君は僕を守ってくれる、不思議な壁のような存在だ」
勝利の余韻に浸りながら、選手たちがファンとともにOasisの「ワンダーウォール」を合唱する。W杯北中米大会のイングランド代表戦では、こんな光景がいつも繰り広げられてきた。だが7月15日、アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムの状況は異なっていた。試合後、スタンドに渦巻いたのは思いもかけぬ展開への戸惑いと嘆き、そして監督のトーマス・トゥヘルに対するブーイングだった。
イングランドは宿敵アルゼンチンに先制し、85分までリード。あと数分しのぎさえすれば決勝に進出できるはずだったが、目論見は脆くも崩れる。まずエンソ・フェルナンデスのミドルシュートで同点に追いつかれ、アディショナルタイムには、ラウタロ・マルティネスにヘディングシュートで勝ち越しゴールを許してしまう。
よりによって、このような状態を招いた最大の戦犯はトゥヘルだった。先制した後は、守りを固めて逃げ切るべくウイングを下げてセンターバックを投入。守備の枚数をさらに増やし、極端にラインの低い5-4-1に布陣を変更している。
しかしアルゼンチンのようなチームを相手に引いて守ろうとするのは、自殺行為に等しい。しかもこの間、攻撃は完全に沈黙した。アンソニー・ゴードンが55分に先制してから逆転ゴールを許すまでの37分間、ボール支配率はわずか11.9%にとどまり、成功させたパスも26本しかなかった。これでは追加点など奪えるはずもない。彼らは敗れるべくして敗れたのだ。
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photograph by Masashi Hara
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