#947
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【平昌五輪密着記】「笑っちゃいました。早すぎ、って」宇野昌磨が漏らした銀メダルの重さ…「僕は自分の演技をしただけ」発言の真意は?<アーカイブ記事/2018年>

羽生結弦の背中を追いかけて、辿り着いた大舞台。特別な思いは持たず、1つの試合として挑んだ結果、世界2位にまで上り詰めた。この驚くべき20歳の平昌での戦いに密着し、強さの秘密に迫った。(初出:Number947号 [平昌密着記]宇野昌磨「特別ではない銀メダル」)

 オリンピックの男子フリー、最終滑走。4年に一度、世界が固唾をのんで見守る4分半を託されたのは、20歳の若き宇野昌磨だった。首位の羽生結弦に勝つには213.68点が必要で、宇野の自己ベストは214.97点。金メダルも射程圏内だった。

「羽生君に勝ちたい。でも今日の身体の感じはあんまり良くないな。でもやるしかない。それに本番前の練習が悪いのはいつものことなんだから、慌てる必要はない」

 弱気も強気も、色々なことがごっちゃになって頭をよぎった。今日の自分は、どっちに転ぶのだろうか。そして自分の緊張の度合いを確認する。

「メンタルと身体の動きは直結している。緊張しすぎても、リラックスしすぎてもいけない。今日は特別な緊張もしていないし、あとは練習どおりやるだけだ」

「負けず嫌い」だけが自分のパワー

 『トゥーランドット』の音楽が流れると、名古屋のリンクで毎日繰り返してきた通りに、自分の感覚にまかせて滑りだした。

 スケートを始めてから15年。「負けず嫌い」だけが自分のパワーであることを知っていた。オリンピックは関係なかった。ただただ、憧れの羽生の背中を追い掛けているシチュエーションにワクワクしていた。

 心に火が点いたのは、ショートプログラムの試合前日となる2月15日だった。宇野はかねがね、「僕の唯一の目標は、羽生選手に勝つこと」と明言してきたが、今季初めて羽生と共に練習に臨んだのだ。

 羽生は11日に韓国入り。一方、9日の団体戦に出場したあとソウルで特訓を積んでいた宇野は、15日の練習で初めて羽生と会うことができた。この日、羽生は絶好調で4回転ループを降りる。すると記者たちからどよめきが起こり、カメラのシャッター音が響いた。宇野自身が4回転ループを降りても、どよめきは起こらない。

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photograph by Asami Enomoto/JMPA

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