調教師として開業してしばらく経ったある日、辻哲英に聞いたことがある。厩舎としての今後の目標は、と。こんな質問を投げかけると、普通は国内外の大レースや、リーディングなどのタイトルが挙がるものだが、辻の回答は少しばかり違った。
「自分は小学校の卒業文集で、将来の夢の欄に“厩務員”と書いていました。それくらい幼い頃から現実的な考えを持っている人間なんです(笑)。いきなり高い目標を掲げるよりは、地道に一歩一歩積み上げていきたい。その先にこそ大きなレースだったり、成功というものが待っているんじゃないかと思うんです」
今年で開業5年目。毎年堅実に勝ち星を重ねながら、3月にファンダムでGIII毎日杯を勝って重賞初制覇。4月にはイミグラントソングでGIIニュージーランドTも制するなど、まさに絶好調といった印象だが……当の本人はいたって素っ気ない。
「ああ、よく言われますね。“最近調子いいね”とか。でもそのたびに、こう返すんです。『12月になったら見ててください。きっと年間の勝ち星は変わりませんから』って(笑)。自分は年の始めに管理馬の顔ぶれを見ながら、1年間の勝ち星をイメージするようにしています。これをしておかないと、焦ってしまうと思うんですよ。おかげで数年前には4月まで勝てない年があったのですが、まったく焦ることはありませんでした。逆も然りです。最初にポンポン勝てたからと言って、調子に乗ることもありません」
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