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《インタビュー》「母には『妹を参考にしてみれば』と言われ」エース・張本智和が語る卓球との距離感、そして“変える勇気”「100個の小さい失敗より、1個の大きな失敗を糧に」

2025/05/17
2度目の大舞台で屈辱を味わった日本のエースは「敗北」を糧に昨年のアジア選手権で日本男子50年ぶりの頂点に立った。ロス五輪へ向け再スタートした21歳が描く道筋、覚悟とは。(原題:[エースの葛藤と決意]張本智和「“変える勇気”を新たな強さに」)

 嫌な現実から目をそむけたいときは誰にだってある。しかしそれは現実に帰還するための一時的な逃避。張本智和の場合、映画やドラマ鑑賞に頼ることが多いという。

「映画やドラマに助けられていることがあります。その世界に没頭できると、卓球のことを思い浮かべなくてもいいので。たとえば、現実では信じられないような状況の物語とか、自分が出会ったことのない世界の物語とか、試合で負けた負の思い出が一瞬でも忘れられるような、そういう作品を求めたりもします。でも、忘れてそうで結局は結びついてしまうこともある」

 優勝しない限り敗北になる以上、悔しさと付き合っていかなければならないケースがほとんどだ。全面的かつ一気に受け止めがちな、超がつくほど負けず嫌いの彼にとっては、緩衝材ともなっている。

 敗北が、己を強くする――。パリオリンピックの経験なくして、昨秋のアジア選手権優勝という快挙はなかった。

 日本男子のエースとして挑んだパリ。初戦敗退の混合ダブルス、金メダルに輝くことになる中国の樊振東(ファンジェンドン)に準々決勝で散ったシングルス、失意に突き落とされた団体といずれもメダルには届かなかった。それでもやり切った実感を持つことはできた。

「樊振東選手との試合では2-0で勝っていたとはいえ、かけっこで言えば最初に数メートルをリードしただけに過ぎなくて地力が足りなかった。最後の数本を取り切る力が確実に相手より劣っているなと思いました。ただ大会を通してみても、そのときの100%に近いものは出せたかなって。東京オリンピックは団体でメダルを獲った喜びとやり切った喜びが一致しなかった。でもパリは結果に関係なく、ある程度納得して終われた大会ではありました」

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photograph by Wataru Sato

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