#876

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「変わりたい…よりも、壊していきたい」41歳イチローが語る新天地での変化と成熟、そして言葉「本当に自分のことを伝えられるのは、自分ではない」《インタビュー/2015年》

2025/04/18
ヤンキースでの2年半を終え、野球人生初のFAとなったイチローが新天地に選んだのは、若手選手の多い、ナ・リーグのマイアミ・マーリンズだった。41歳のイチローは晴れやかな表情で、未知の挑戦に言葉を弾ませていた。(初出:Number876号 イチロー「変化、破壊、成熟」 NumberPLUS「イチローのすべて」にも掲載)

 イチローは41歳になった。

 日本での9年間で1278本、メジャーでの14年間で2844本のヒットを放ってきた。今年、日米あわせてプロ24年目の春を過ごしている。

 2015年3月半ばの、フロリダ州ジュピター。

 マイアミ・マーリンズがスプリング・トレーニングを行うロジャー・ディーン・スタジアムには、クラブハウスが隣接している。その日の練習を終えたイチローが、海苔を巻いていないおにぎりを2個持って外に出てきた。フロリダの強い陽差しが照りつける中、イチローはベンチに腰掛けると、美味そうにおにぎりを頬張った。

 そんなイチローの横を、マーリンズの若いマイナー選手が通り過ぎる。何人かの選手がスペイン語と英語をごちゃまぜにして、イチローに声を掛けた。

“?Qué pasó?”(元気か)

“Two hits?”(今日のヒットは2本?)

 イチローが流暢に応える。

“I’m not playing today. Tomorrow!”(今日は試合出てないよ、明日だ)

“How did you do yesterday, three hits?”(じゃあ、昨日はどうだった、ヒット3本か?)

“No no, Zeeeero!”

 イチローの発音をあえてカタカナで表すなら、“ゼロ”ではなかった。

“ジィィィーロォウ”

 相変わらず、見事な発音だった。

「川崎宗則以外、得意なヤツなんていないと思います」

──英語もスペイン語も、不自由しませんね。

「もうあきらめました。日本語もろくに扱えないのに外国語やってる場合じゃないでしょ」

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photograph by Takuya Sugiyama

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