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「弓子から『今、話せますか』とメールが」イチローが語る44歳マリナーズ復帰の裏側と偽らざる思い「僕は年齢不詳、国籍不明のマスクマン」《インタビュー/2018年》

2025/04/19
3年間を過ごしたマーリンズからFAとなった44歳の外野手に、古巣のマリナーズからオファーが届いたのは3月に入ってからだった。オファーのない失意を泰然に変えたのは、野球に対する絶対的な自信だ。6年ぶりに戻った愛する地で、年齢への先入観との戦いが再び始まった。(初出:Number951号 イチロー「失意と泰然」 NumberPLUS「イチローのすべて」にも掲載)

──マリナーズというのはイチロー選手にとって、やっぱり特別なチームなんですか。

「言うまでもありません。僕とマリナーズは……1999年、オリックスの選手として2週間、マリナーズのスプリング・トレーニングに参加するところが始まりです。そのとき、ユニフォーム姿のケン・グリフィー・ジュニアに初めて会って、A-RODもいて、当時のマリナーズはスーパースター揃いのチームでした。その2年後、ポスティングシステムでマリナーズに入ることになりますが、それも自分で選択できたわけではありません。マリナーズに獲ってもらって、そこからの11年半は長い時間でしたし、チームとも街とも、ファンとの関係も特別でした。マリナーズを出てからも僕の家はシアトルにあって、いずれまた、このユニフォームを着てプレーしたいという気持ちが僕のどこかには常にありました。

 でも、僕のほうから『シアトルに戻りたい』とはとても言えませんでした。どこかに引っ掛かっていたものがあった。自分が選んだ道ですから仕方がなかったんですけど、それをこうして戻してもらったことで、マリナーズがもっと特別な存在になった。僕の中で、ずっとすっきりしなかったことがようやく完結したんです」

マリナーズへ戻りたい気持ちはいつから芽生えていたのか?

 今から6年前の2012年7月23日、マリナーズのイチローはヤンキースへトレードされた。

 それは当時、チームの再生を図っていたマリナーズの戦略なき戦術が、イチローを混乱させたことがきっかけだった。明確な理由も明らかにされないまま、1番から3番、3番から1番、そして2番へ、イチローの打順は変わる。先の見えない起用法に危機感を募らせたイチローは、マリナーズに残るか、他球団へ移籍するかの決断を下すことになった。イチローにとっては「ネガティブなチャレンジか、ポジティブなチャレンジか」という二者択一。イチローは後ろ髪を引かれる思いで、後者を選んだ。

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photograph by Naoya Sanuki

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