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「成熟という表現が当てはまる」背番号は31に…イチローが“新天地”ヤンキースで感じた特別感とは?「この球場では、野球がちょっと違う」《密着記事/2012年》

バンッ!
ヤンキースタジアムの試合が始まる直前。
クラブハウスからダグアウトに入ってくるなり、イチローが派手なジェスチャーとともに、大声で叫ぶ。やがてイチローはチームメイトと順番に拳をぶつけ、手をパーに開きながら、ダグアウトの中を練り歩く。そして、そのたびにこう叫んでいる。
「バンッ!」
マリナーズを離れることが決まったとき、イチローはこう言っていた。
「一番勝っていないチームから一番勝っているチームに行くことになるので、気持ちの高め方をどうしようかなと思っています」
ニューヨークでの何とも開放的なその表情を見る限り、ピンストライプのイチローのテンションは十分、上がっているようだ。
「シーズン途中から僕、ここ(ヤンキース)に来たわけですが、ペナントレースに参加できていないチームは、気持ちを途切れさせないために、己の中からモチベーションを探さなければ不毛な時間を過ごすことになる。自分の中から意図的にその方向に持っていくというアプローチが必要です。でも、ここではそれが必要ありません。ここに来れば(優勝を争う)状況が勝手にそう(集中)させてくれる。それは(現在のマリナーズとは)大きな違いだと思います」
リーグ優勝40回、うちワールドシリーズ制覇が27回。イチローがメジャーにやってきた2001年以降、プレーオフに進むことができなかったのは2008年の一度だけだというヤンキース。同じ2001年以降、プレーオフに進めたのは2001年の一度だけ、ワールドシリーズには一度も出場したことのないマリナーズとは、その歩みはあまりに対照的だ。ヤンキースの選手は秋が深まるほど、自然とゲームに集中し、テンションが上がってくる。一つの勝ちに心が滾り、一つの負けが重い9月を戦うのは、いったい何年ぶりだろう。イチローはこう話した。

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