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「国内レースに慣れ過ぎてしまうと…」葛西潤と太田智樹がパリ五輪で感じた「壁」と“日本だけ”ダブルペーサーの限界《陸上男子1万m》

2024/08/20
5月3日の日本選手権、日本歴代4位のタイムで優勝した葛西。パリ五輪では20位
パリ五輪・陸上競技を現地で取材した米国在住のライター・及川彩子さんが、日本人選手だけでなく海外の選手にも話を聞き、NumberPREMIERにオリジナルコラムを寄稿。4年に一度の祭典で、選手たちが見た「現実」と未来への「提案」とは?

 男子1万mに出場した葛西潤、太田智樹の二人は「世界との壁」を痛感しながら走っていた。

「いいメンバーが揃っていたので高速レースになると思った」と上位に入った強豪選手たちが証言したように、稀に見る速いペースで始まった。

 東京五輪のこの種目覇者であるエチオピアのバレガが、同国のケジェルチャと共にレースを引っ張り、最初の1000mは2分43秒1。集団は一気に縦長になり、その後も1000mを2分40秒前後で進んだ。

 日本勢は3000mすぎから徐々に遅れ出す。先頭集団は5000mを13分23秒で、葛西は13分42秒、太田は14分08秒。後半は頻繁に先頭が入れ替わり、ペースが細かく上下する展開になるが、多くの選手がハイペースに食らいついた。

「どんなレースでも最後のスパートで勝てると思っていた」

 そう話したウガンダのチェプテゲイが26分43秒14で優勝、0秒3差の2位にエチオピアのアレガウィ、3位には米国のフィッシャーが26分43秒46で入った。1位から6位までのタイム差はわずか0秒88という大接戦で、13位までが26分台というハイレベルな戦いだった。

悔しさが口をついた日本勢

 葛西は27分53秒18で20位、太田は29分12秒48の24位。レース後、葛西、太田共に悔しさが口をついた。

「悔しいの一言。壁は高いなと思った」

 葛西は汗を拭いながら言葉を絞り出した。

©Yuki Suenaga
©Yuki Suenaga

「怪我もなく順調に調整はできていたが、経験も実力も足りなかった。最大値でも戦えなかった。3000mくらいで離れてしまった。(五輪に向けて)4年間準備してきたというよりは、半年くらいの期間で臨んだ。64、65、66秒くらいで押して行けば26分台で走れる練習はしてきたが、今日のようなペースの上げ下げがある中ではそのペースで走るのは難しい。そこがまだまだだと思う」

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photograph by Yuki Suenaga

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