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【レスリング男子】「俺より先に獲りやがって!」4人の金メダリストは仲間でありライバル…その濃い絆とは?《文田健一郎/日下尚/樋口黎/清岡幸太郎》
「文田、優勝おめでとう。君はキラー・ヨーロピアン。ヨーロッパの選手は誰も勝てなかった。でも、それはグレコローマン・スタイルが世界に普及した証でもある。これからもキラーぶりを発揮してくれ」
8月8日、セーヌ川に浮かぶ船舶のレスリングハウスに招かれた文田健一郎は、UWW(世界レスリング連盟)のネナド・ラロビッチ会長から盛大な祝福を受けた。
その2日前にグレコローマン60kg級で優勝を果たした文田は笑顔で応えた。
「僕は世界一グレコローマンを愛している。これからも普及に努めたい」
グレコローマン金メダルは40年ぶりの快挙。
男低・女高の時代から男女拮抗の時代へ。そう断言してもいいほど、パリ五輪のレスリング種目では日本男子の躍進が目立った。
男子のレスリングには下半身へのタックルもOKのフリーと上半身だけの攻防で勝負を争うグレコローマンというふたつのスタイルが存在する。今大会では反り投げなど華麗な投げ技の攻防が売りでヨーロッパやロシアで盛んなグレコローマン勢が奮闘した。文田が最も高い表彰台に昇った翌日には、77kg級の日下尚も続いたのだ。
日体大でふたりを指導し、パリ五輪では男子グレコローマンチームのコーチでもある笹本睦は躍進の理由を語る。
「高校や大学の先生がしっかりとグレコローマンの選手を育てていることが大きい」
グレコローマンにおける日本代表の優勝は'84年ロサンゼルス五輪52kg級の宮原厚次以来、実に40年ぶりの快挙だった。女子やフリーと比べ、グレコローマンは日陰を歩く時代が長く続いた。金メダルに到達する者がずっといなかったからだ。2016年のリオデジャネイロ五輪では現在MMAで活躍中の太田忍が、'21年の東京五輪では文田が、いずれも決勝で涙を呑んだ。
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