母国開催の五輪を失意のうちに終え、探していた復活の糸口は南半球で見つかった。酸いも甘いも噛み分けたベテランとして迎える3度目の五輪。自らの現在地と目指すゴールを気負いなく語った。(原題:[夏男復活の予感]瀬戸大也「ノリノリだった自分を超えたい」)
弾けるような底抜けの明るさを持つ彼にはやっぱり暑い夏が似合う。
「久しぶりに夏の試合に向けてワクワクし始めています」
パリ中心部から電車で30分ほどの街ナンテール。
昨秋からオーストラリアのゴールドコーストを練習拠点とする瀬戸大也は、競泳日本代表チームのなかでも、池江璃花子らと一緒に一番早くパリに入り、開幕1カ月前から最終調整に入った。
「この時期オーストラリアは冬ですけどナンテールは夏で暑くてすごく発汗する。トレーニングをしてても気持ち良いし、身体も絞りやすい。身体を作っていくにはやっぱり暖かいほうが良いですし、気持ちも上がってきました」
東京五輪は無双状態で迎えるはずが、歯車が狂い惨敗。
この熱量を待っていた。暑くなればなるほど、熱くなる。そんな夏男の物語は、2013年のスペイン・バルセロナで初の世界一に立った世界選手権から始まった。灼熱のスペインの空の下、日焼けした目いっぱいの笑顔を、表彰台の頂上で見せていた姿が思い出される。当時、19歳。高校を卒業したばかりだった。
その後も夏のビッグイベントでは好成績を連発し続ける。世界選手権連覇、'16年リオデジャネイロ五輪では400m個人メドレーで銅メダルを獲得。'19年には世界選手権で日本人初の個人メドレー2冠を果たすまでに成長を遂げた。
しかし、五輪の神様は気まぐれだ。無双状態で迎えるはずだった東京五輪は新型コロナの感染症拡大によって1年延期され、さらにプライベートの不祥事も――。歯車が狂った瀬戸は五輪本番で惨敗を喫した。
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photograph by Tsutomu Kishimoto