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「信頼していたコーチが、突然中国へ」池江璃花子が“手放した感情”とは何か?「1番でなくてもよくなったんだ」《独占インタビュー》

2025/05/26
涙のない日本選手権は久しぶりだった。嬉し泣き、悔し泣き。復帰後に流した涙は数知れない。単身オーストラリアに渡って1年半。様々な経験をしながら、自分の感情をコントロールできるようになってきた。手放せたもの、それにより得たものは何だったのか。この数カ月に起きたことを振り返りながら、核心に迫った。(原題:[独占インタビュー]池江璃花子「手放した感情」)

 50mバタフライ決勝。7月の世界選手権代表選手選考会を兼ねた日本選手権、池江璃花子はこの種目に懸けていた。

 いつにも増して緊張の波が押し寄せる。50m種目に緊張は大敵だ。

「力んじゃダメ、力んだら終わり」

 心の中でそう唱えてスタート台に上がると、ひとつ大きな深呼吸をして、合図とともにプールに飛び込んだ。

 病気から復帰後、ずっと課題だったスタートがうまくいった。水中でのドルフィンキックはいつもは8回だが、「8回で10mくらいしか進まないのはもったいない」との考えから、1回増やした。ドルフィンキックをしながら「焦ってはダメだ」と言い聞かせる。頭を出すと、少し遅れをとっているが、追いつける自信はあった。大事なのは25mまでに体勢を整えて、後半の25mに臨むこと。まさにそのあたりでトップに立つと、ノーブレスのまま1位でゴール、派遣標準記録を突破した。

「ラスト5m、バテてしまってテンポを上げられなかったけど、25秒台前半(25秒41)で泳げたのは嬉しい。タッチがもっと合っていたら、派遣I(25秒32以内、世界選手権での3位以内相当)を切れていたので、すごく悔しいです。ドルフィンキックの回数は、そもそも自分は遅い方なので元に戻そうと思います」

 50mバタフライは、日本選手権で過去6回優勝している種目で、短水路(24秒71)、長水路(25秒11)ともに日本記録を保持している得意種目だ。これまで出場したオリンピックでは種目外だったが、2028年のロス五輪では、種目に採択され(正式決定は日本選手権後の4月10日)、それが池江の大きなモチベーションとなっている。

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photograph by Asami Enomoto

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