6月のとある夜、フランクフルトのラント通りにある食堂に立ち寄りビールを頼んだ。
「1杯しか提供できない」
店主は薄暗い表情で告げてきた。
「イングランドのやつら、全部飲み干しやがった」
EUROにビールが戻ってきた。試合日、フランクフルトのレーマー広場はイングランドのサポーターで埋まった。石畳には空いたビール瓶が転がり、サッカーボールが広場の空を飛び交う。
欧州各国のサポーターが集い4年に一度の祝祭をビール瓶とともに祝う。前回大会はコロナ禍により観客の入場や町中のイベントも制限された。試合がただ淡々と行われていくだけの、まったく味気ない大会だった。
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photograph by Getty Images