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「バッターが稼頭央さんだったから」松坂大輔が語るワールドシリーズ制覇と“100球の常識”への違和感~連載「怪物秘録」第41回~

2024/03/23
メジャー1年目でワールドシリーズの舞台に立つ機会を得た怪物。相手は松井稼頭央擁するロッキーズだった。レッドソックスは逆転でのリーグ制覇の勢いそのままに4連勝でリングを手にする。

 2007年のワールドシリーズはレッドソックスとロッキーズが対戦した。ボストンでレッドソックスが連勝し、迎えたデンバーでの第3戦。レッドソックスの先発は松坂大輔、ロッキーズの1番は松井稼頭央――1999年から5年間、ライオンズで投打の主役を務めた2人が世界一を決める大舞台で対峙する。1回裏、初球だった。

◆◆◆

 僕はまっすぐを投げました。稼頭央さんがいきなり振ってきて、右中間へライナー性の当たりを打たれます(ヒットをライトが弾いて処理し損ない、センターがバックアップする間に松井は二塁へ)。あの初球はその年の4月、メジャーでのイチローさんとの初対決が伏線になっていました。『今度こそまっすぐだろ』みたいな……もうあんな後悔はしたくない、打たれてもいいからまっすぐで行くよ、という気持ちです。

 ワールドシリーズで稼頭央さんと対戦できたのは特別でしたし、嬉しかったですね。第1打席、たぶん稼頭央さんは普段通りだったと思います。稼頭央さんにも僕にも笑顔はなかったし、アイコンタクトをした記憶もありません。お互い、いい緊張感の中で対戦できている感じでした。もちろんワールドシリーズでの初先発の試合でしたし、勝たなきゃいけない重みはありましたが、僕の状態は春先とはまったく違っていました。投げるボールには自信を持てていましたし、イチローさんにまっすぐを投げられなかった春先とは僕自身がまったく違っていました。だから初球、まっすぐを投げることに迷いはなかったし、それでも打たれちゃったのは、バッターがあの稼頭央さんだったから、ということで(笑)。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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