シーズン15勝を挙げた大リーグ1年目、チームはポストシーズン進出を果たす。ディビジョン・シリーズではエンゼルスをスイープ。しかし、次のリーグ制覇をかけた戦いはまさに死闘と呼べるものだった。
メジャー1年目の松坂大輔はシーズンを通してローテーションを守り、チームトップの32試合に先発、15勝を挙げて200イニング、200奪三振をクリアした。レッドソックスはア・リーグ東地区でヤンキースを振り切っての優勝を勝ち取り、世界一を目指してポストシーズンへ突入する。
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地区優勝で初めてのシャンパンファイトを経験して、ディビジョン・シリーズでもエンゼルスをスイープして2度目のシャンパンファイト……でも、そのときのことはあまり覚えていないんです。印象に残っているのは、その次、リーグ・チャンピオンシップでインディアンズに勝ったときのシャンパンファイトです。レッドソックスが優勢だと言われる中で始まって、第4戦で1勝3敗と王手を掛けられる苦しい展開。僕も第3戦に先発して4失点、5回を投げ切ることができませんでした。ポストシーズンに入ってからの僕はエンゼルス戦、インディアンズ戦と2試合続けて4回3分の2、15個目のアウトを取れずにマウンドを下りることになってしまいます。
メジャーでの先発投手は試合後、メディアの取材を受ける責任がありました。でもあの日はどうしても話をする気になりませんでした。クラブハウスでロッカーの前に座ったまま、ひとり、反省会をしていたんです。それがあまりに長かったので選手の何人かに心配をかけてしまって、大丈夫かと声をかけられました。だから「これは次の試合のための大事な時間だ」と言いましたが、遠巻きに僕を待つ人がボールペンをカチカチ、カチカチと鳴らし続けている音が気になって、僕を余計に苛立たせました。
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photograph by Kiichi Matsumoto