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【振付師・宮本賢二の回想】2011年の春、奇跡のような空間だった「東日本大震災チャリティー演技会」を振り返る<荒川静香、髙橋大輔、羽生結弦らの演技と言葉>
カナダ・モントリオールで予定されていた世界選手権の中止が告知されたのは3月11日のことだった。世界各地へと広がった新型コロナウイルスの脅威に、半ば予期されていたこととはいえ、大きな喪失感をもたらす一報であった。
この状況の中でフィギュアスケートはどうなってしまうのか。不安の中でかすかな手掛かりとして思い至ったのは、9年前の記憶だった。2011年、東日本大震災で、国立代々木競技場で予定されていた世界選手権が中止となった年だ。
現役を含む12人のスケーターが「力になれれば」と集まった。
震災からひと月ほど経った4月9日、今日まで語り継がれる1つの催しが行われた。神戸市立ポートアイランドスポーツセンターで開かれた「東日本大震災チャリティー演技会」である。
出演したのは髙橋大輔をはじめとする現役スケーターや荒川静香や本田武史、田村岳斗といった元五輪代表たち。震災後間もない頃とはいえ、チケットは発売されるや瞬く間に完売した。演技会立ち上げの中心にいた振付師の宮本賢二は、当時を振り返ってこう語る。
「被災地は大変なことになっていても、スケーターは身体は動かせる状態だったんです。だから、何かできることはないのか、そう思ったのがきっかけでした」

震災当日、仕事で福岡にいた宮本は、混乱が少しずつ収まっていくにつれ、関西のスケーターたちと話し合いながらイベントの実現へと動き始めた。
兵庫県に生まれ育ち、自身、阪神・淡路大震災を体験していたことから来る心情もあった。準備に向けた1カ月間、自らの仕事はキャンセルしてスーツ姿であちこちを飛び回り、各地の連盟や役所などに出向く調整役を買って出た。行く先々で誰もが快く協力を申し出てくれた。
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