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「涙が湧いてきたんです」エリザベータ・トゥクタミシェワ24歳、「自分の道」で見つけた“6年ぶりのメダル”<ドキュメント/2021年>

2021.3.24 World Championships
世代交代が激しいロシア勢のなかで、6年ぶりの大舞台で輝きを取り戻した。紆余曲折を経験しながら、手に入れた成熟。己の道を見つけた元女王は、夢の舞台を目指す。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2020-2021シーズン総集編[復活した異彩の24歳] エリザベータ・トゥクタミシェワ  「自由奔放な女王の涙」)

 初めて人前で見せる涙だった。掲示板に暫定「1位」が表示されメダルが確定すると、目頭をおさえ、嗚咽をこらえた。

 24歳にして世界選手権の銀メダルを手にしたエリザベータ・トゥクタミシェワ。控えめな涙に、物語が詰まっていた。

2021.3.26 World Championships ©Asami Enomoto
2021.3.26 World Championships ©Asami Enomoto

21歳で平昌五輪代表落ちも、選んだ自分の道。

 天才と呼ばれたのは13歳の時だった。ロシア選手権で2位となり、5年後に控える母国開催のソチ五輪メダル候補に。2011年の世界ジュニアでは銀メダルを獲得した。

 しかしソチ五輪シーズンは体型変化に悩まされ、代表落ち。翌'15年、女子史上6人目となるトリプルアクセルを武器に世界女王となった。アレクセイ・ミーシンコーチは、ソチ五輪の悔しさを吹き飛ばすように言い放った。

「やっと世界が本当の才能に気づいた!」

 ところが平昌五輪シーズンには若手が台頭し、21歳で五輪出場を逃す。周囲の女子が10代で引退するなか、自分の道を選んだ。

「スケートがない人生なんて考えられない。勝ち負けにこだわるのではなく、自分の存在を示すために滑ります。それに私はまだトリプルアクセルを跳べますから」

 メディアには強気の発言を繰り返し、妖艶な衣装で話題を呼ぶことも。自由奔放な行動は、忍耐の裏返しだったのかも知れない。

 そして迎えた、北京五輪のプレシーズンとなる今季。正念場だと感じていたのだろうか。集中力が凄まじかった。'20年11月には4回転トウループを練習で降りた。同月のGPロシア杯では、トリプルアクセルを成功させて優勝。11月末にコロナウイルスに感染しても、驚異的な回復で、6年ぶりの世界選手権への切符を手にした。

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photograph by Yukihito Taguchi

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