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「まだまだのびしろはある」坂本花織、“不安”と“絶不調”を乗り越えて立った世界の頂点「(髪を)切ってみると…」<独占インタビュー/2022年>
2024/02/23
北京五輪で銅メダル、世界選手権で金メダルを獲得した日本のエースにとって、大技を封印した今季は、ミスの許されない緊張感との戦いでもあった。不安の中で自己ベストを更新し、磨き上げた土台に自信を深めた22歳は、既に次なる挑戦に胸を躍らせている。(初出:NumberPLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2021-2022シーズン総集編[世界女王インタビュー]坂本花織「自信を持って4回転の世界へ」)
雰囲気は、がらっと変わっていた。
伸ばしていた長い髪は思いきりショートになり、その色にも明るさが加わっていた。
「(北京五輪の)団体のあと、友達に『ショートにしちゃえば』と言われていたのもあって。なかなかタイミングがなかったんですけど、3月29日の夜に世界選手権(フランス)から日本に帰ってきて、30日にすぱーっと切りました」
坂本花織は楽しそうに笑う。
「切ってみたら、2番目の姉に激似(笑)。まぎらわしい形になってしまったなと思ったけれど、だいぶ好評なので満足です」
爽やかな表情が今季の充実ぶりを物語っていた。
3Aや4回転を取り入れず、ジャンプの精度を高め臨んだシーズン。
信念とともに駆け抜けたシーズンだった。
2021年10月、坂本の新シーズンへ向けてのスタンスが明らかになると反響が起こった。トリプルアクセルや4回転ジャンプをプログラムに取り入れない―。ロシア勢をはじめ高難度ジャンプを武器にする選手が増え、新たに挑戦する選手も増えていた。その中で坂本も五輪シーズンでの投入を意識し、練習をしていた。一転して「異例」とも受け取られる決断を下した経緯を明かす。
「練習で成功する確率がほぼゼロに近かったし、なのにやるのはただのリスクでしかなかったので」
いま跳べているジャンプの精度を高め、高い加点を引き出す演技を追求しよう。坂本はそう考えた。自分のスケートを客観視し、判断できたことは、坂本の成長も物語っていた。
むろん独りで判断したわけではない。中野園子コーチ、振付を指導するブノワ・リショーにも考えを伝えた上で、相談した。
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photograph by Natsumi Kinugasa