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「ゴールはもっと先にある、成長した自分」宇野昌磨が2022年世界選手権“初優勝”のあとに語ったこと<ランビエルコーチとの二人三脚>

2022.3.26 World Championships
演技を終えると、控え目なガッツポーズも出た。高難度プログラムで挑んだ五輪のわずか1カ月後、同じ『ボレロ』で自己最高得点を出し世界選手権を初制覇。ランビエルコーチに導かれ、理想を求める旅はまだ終わらない。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2021-2022シーズン総集編[恩師に捧げる初戴冠] 宇野昌磨 「世界一はゴールじゃなかった」)

 名前を呼ばれて宇野昌磨が、モンペリエの会場の氷の中央に出てきた。SPでトップに立ち、24人中の最終滑走である。

 人の顔というのは、不思議なものだとつくづく思う。平昌オリンピック銀メダル、北京オリンピックで銅メダルという実績を残してきた宇野だが、この日の彼は「チャンピオン」の顔をしていた。世界の頂点に立つ準備が出来ているアスリートの顔だった。

 フランス人の作曲家モーリス・ラヴェルの『ボレロ』が始まった。「自分の代名詞になるような作品にしたい」と宇野が願った、ステファン・ランビエルコーチ振付によるプログラム。5本組み込んだ4回転ジャンプの1本目、4回転ループがきれいに決まった。苦手意識があった4回転サルコウも、難なく着氷。4回転+2回転トウループ、トリプルアクセルと次々成功させていく。後半に入れた4回転フリップがきれいに決まった瞬間、宇野の勝利を確信した。最後の4回転トウループはオーバーターンがついたが耐え、2度目のトリプルアクセルは体重が少し後ろにいってオイラーの次に予定していたトリプルフリップが1回転になった。だが着氷で姿勢を立てなおし、「やってしまった」というようにちょっと苦笑いをした。

2022.2.8 Beijing Winter Olympics © Asami Enomoto/JMPA
2022.2.8 Beijing Winter Olympics © Asami Enomoto/JMPA

 いよいよ、最後のステップシークエンスに差し掛かった。北京オリンピックで演じたステップに不満をもらしたステファン・ランビエルコーチを、今度こそ満足させたい。かねてからそう宣言していた宇野の、こだわりのステップである。身体は極度に疲労しているはずなのに、一つ一つの動作が力強く大きい。肩甲骨から伸ばした腕の指先は、さらに10cm先の空気に届こうとしているかのようだ。スピードを保ちながらツイズルやスプリットジャンプ、最後のクリムキンイーグルまで、音楽にぴったり合わせて華麗に演じ切った。

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photograph by Asami Enomoto

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