#985
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《ロングインタビュー》遠藤保仁が語る公式戦「1000試合」の喜怒哀楽…「すべてがパーフェクトだった」と語る代表でのパスは?

2024/01/21
8月2日、プロ22年目で出場した公式戦は1000に達した。ピッチ全体を眺め、敵の急所へピンポイントのパスを通す。ピンチになっても慌てず騒がず。常に冷静沈着な司令塔が偉業達成までの過程で、唯一涙を流した試合とは―。(初出:Number985号遠藤保仁  [偉業達成への道のり] 1000試合の喜怒哀楽。)

 泣いて、笑って、喜んで。

 偉大な記録の裏には、感動巨編の映画を見るかのように紆余曲折のストーリーが詰まっているものだと思いがちである。

 遠藤保仁は一線を画す。事象と感情に大きな浮き沈みをつくらない。常に一定を保とうとしてきた。過去に捕らわれず、地に足をつけて先を目指そうとする。それは味わい深い骨太な長編の記録映画のように。

 その数、1000―。

 8月2日、J1第21節、アウェーのヴィッセル神戸戦で日本人初となる公式戦通算1000試合出場を達成した。

 鹿児島実業高から1998年に横浜フリューゲルスに入団して以降、22年かけてたどり着いた。J1(621試合)、リーグカップ(72)、天皇杯(48)、ACL(58)、J2(33)、そしてA代表(152)、その他(16)。年平均45試合、毎年コンスタントに出場を続けることがどれほど難しいか。ケガなく、不調なく。そうでなければ到底、無理な数字だと言っていい。世界でもパオロ・マルディーニ、ライアン・ギグス、シャビら一握りのレジェンドしか達成していないのだから。

2010 名古屋と対戦した'10年元日の天皇杯決勝。後半32分に見事なシュートを突き刺し、大会連覇を果たした ©Toshiya Kondo
2010 名古屋と対戦した'10年元日の天皇杯決勝。後半32分に見事なシュートを突き刺し、大会連覇を果たした ©Toshiya Kondo

 鉄人とて人間だ。映し出されない感情はある。隠されてきた喜怒哀楽はある。その小さな感情の“揺れ”を知れば、「本当のヤット」を理解することができる。

「このメンバーでもうやれないのかっていう寂しさ」

 ピッチで彼が涙を流す姿を目にしたのは一度しかない。1000分の1だ。

 それは2010年6月29日、南アフリカワールドカップ決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦だった。120分戦ってもスコアは動かず、結局はPK戦の末に敗れた。準々決勝に進めば、スペインとの対戦になったが、叶わなかった。

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photograph by Takuya Sugiyama

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