'21年夏、ユニオンSGに加入した三笘は、ベルギーリーグで首位を争ったチームにあって、卓越した決定力で大きな旋風を巻き起こした。鮮烈な記憶を残した日々を現地記者が振り返る。
2年前の夏、三笘薫はベルギーの首都ブリュッセルに降り立った。
川崎フロンターレからブライトン&ホーブ・アルビオンに引き抜かれた当時24歳の日本人選手は、未経験だった欧州の生活やフットボールに慣れるため、イングランドのプレミアリーグよりも負担の少ないベルギーのプロリーグで、まずは期限付きで1シーズンを過ごすことになった。当時はまだ代表経験もなく、英国の労働ビザの取得が困難だったこともあり、ブライトンの提案に選手側が同意したという。
ローン先のロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズは、2018年にブライトンのオーナーであるトニー・ブルームが筆頭株主となったクラブで、両者は姉妹関係にある。当然、期限付き移籍後の買取オプションは付けず、あくまで翌シーズンのプレミアリーグ挑戦への足慣らしとして、ブライトンは三笘を妹クラブに預けたわけだ。
加えて、ユニオンの貴重な戦力とも考えられていた。1897年に創立されたこのクラブは、国内リーグ優勝回数で3位の11度を数える名門ながら、最後にそのトロフィーを掲げたのは1934-’35シーズン。ただし近年はブライトンと同じようにブルームが買収してから上昇し、三笘が加入した2021-’22シーズンは実に48年ぶりに1部リーグに返り咲いていた。
ブルームの独自の補強ポリシーは、市場で過小評価されている選手を獲得し、自前で成長させていくというものだ。三笘もポテンシャルを見込まれたひとりだったわけだが、その頃のベルギーに彼を知る者はほとんどいなかった。
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