#1086
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「(優勝は)想像と同じでした」慶應義塾高校の“夏の主役”たちが語る「神様の啓示」と「若き血」<107年ぶりの夏の甲子園V>

2023/12/07
(左から)安達英輝、丸田湊斗、大村昊澄、小宅雅己。夏の甲子園を制した野球部の面々だ
実に107年ぶりの夏の甲子園王者となった慶應。世を巻き込むフィーバーの裏には何があったのか。主将、1番打者、ムードメーカー、2年生エースー。4人の言葉からその答えを紐解いていく。

 野球の神様は、いましたか?

「いましたね」(主将・大村昊澄(そらと)

 今にして思えば、あそこが一つの分水嶺だったのかもしれない。

「笑いながら『送りバントだったらラッキーだね』と言っていたんです。なんか、余裕あるな、って」

 代打の切り札であり、伝令役でもあった慶應の背番号13、安達英輝は、監督である森林貴彦の言葉をそう思い出す。三枚目役を自ら買って出るタイプの安達は、チームのムードメーカーでもあった。

 2023年8月16日、阪神甲子園球場で開催されていた全国高校野球選手権大会はこの日から3回戦に入る。大会10日目、第2試合に組まれていたのは甲子園常連校で、優勝候補の一角だった広陵(広島)と、慶應(神奈川)のゲームだった。

 慶應は3回表を終えた時点で3-0とリードしていた。だが、中盤から調子を上げてきた広陵の2年生エース、高尾響を攻めあぐねる。そうしている内に3回裏、6回裏と1点ずつ失い、7回裏には、ついに3-3の同点に追いつかれてしまう。

Hideki Sugiyama
Hideki Sugiyama

 押す広陵。それを土俵際で受け止める慶應。後半は完全に広陵のペースだった。

 同点のまま迎えた9回裏、慶應は先頭打者にヒットを許し、0アウト一塁のピンチを招く。そして、打席に3番・真鍋(けいた)を迎えなければならなかった。高校球界を代表する左の大型スラッガーである。

「ニコニコやってる方が相手チームも気持ち悪い」。

 この場面で、慶應の指揮官、森林の言葉を託されたのは、やはり安達だった。

「森林さんの伝令って、いつもは具体的なことしか言わないんです。ここは前進守備を敷きなさい、とか。でも、このときは『インコース勝負でホームランを打たれたらしょうがないから』と。こんなフワフワしたことというか、希望的観測みたいなことを言うこともあるんだなって思ったんです」

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photograph by Shunsuke Imai
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