あれは2011年の正月の某日。大阪の花園ラグビー場に清原和博がいた。
本当はいなかった。
若き在阪のスポーツ記者が息を弾ませる調子で言った。「スタンドの前列、キヨハラがいます」。
年長の取材仲間がグラウンドの脇からどれどれと見上げる。
「アホ。普通の人やないか」
骨太の体格、迫力満点の面相、なるほど似ているといえば似ている。普通の人だけど普通でもなかった。よく勝ち進んだ高校の選手の優しき父親だった。
12年後の夏。甲子園球場。
こんどは実物がいた。わけあって離れた息子の応援だ。視線の先のユニフォームには「KEIO」とあった。
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photograph by KYODO