明らかに、何かがおかしかった。ボードに寄りかかりながらコーチのアレクセイ・ミーシンと話をしているプルシェンコは、不自然に腰を折って体を傾けている。かなりの痛みに耐えているように見えた。
名前が呼ばれると、そのままジャッジたちの中央に座るレフェリーのところへ近寄り、何かを言った。そして観客に向かい、諦めきったような表情で軽く両手を上げて見せた。
「医学的理由により、エフゲニー・プルシェンコは棄権となりました」
アナウンスがあると、まばらな拍手が起きた。「ロシア」コールをしていた会場の観客たちは、呆然としてどう反応していいのかわからないようだった。
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photograph by Kaoru Watanabe/JMPA