目を覚ますと、初めにシーガルの鳴き声が聞こえる。2週間前にブライトンに到着してからほぼ毎日のことなので、おそらくここの人々は大体いつもこんな風に朝を迎えるのだろう。
窓の外には、天の青と雲の白がくっきり映える空と小さな庭が見え、英国でも割とよく見かけるサクラの木から、緑の芝生に向けて花びらが舞い落ちている。そして姿は見えないけれど、きっとそんなに遠くない場所でまた、何かを求めるようなカモメの声がする。
三笘薫が所属するブライトン&ホーブ・アルビオンFCは、地元のファンから「シーガルズ(カモメたち)」と呼ばれている。愛称といっても、例えばマンチェスター・ユナイテッドの「レッド・デビルズ」のような、ほとんど会話で使う人のいないトリビア的な通称ではなく、青と白のこのチームを愛する人々は普段から「シーガルズ」と言う。たぶん本名が長いということもあり、「カモメたち」か「アルビオン」と呼ぶ人がほとんどだ。
そんなシーガルズが、かつてない高さに飛翔している。世界最高の舞台、プレミアリーグで6位。しかもそのクラブ史上最高のシーズンに、僕らの同胞が主力として貢献している。チームを率いるのはイタリアの革命児ロベルト・デゼルビ。クラブの持ち主は現在のプレミアリーグで実に希少価値の高い地元出身の生粋のサポーター、トニー・ブルームだ。
英国でどこよりもハッピーに暮らせる街とも言われるビーチタウンで、ついにフットボールが花開いている。個人的には学生時代に初めて訪れたこの土地に、特別な思い入れもある。だからこうして、26年ぶりにブライトンへやってきた。呼ばれた、なんて言うと大袈裟かもしれないけれど、朝からシーガルの声を聴いていると、歓迎してもらっているような気がしてくる。
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