#1075
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「トライして失敗してもいい」ロベルト・デゼルビはブライトンをどう操ったのか?<カルチョ異端派の戦術眼>

2023/06/23
昨季を9位で終え今季も好発進したチームの頭脳を引き抜かれ、選手もファンも動揺したに違いない。だが、急遽招聘したプレミア初挑戦の指揮官は、より緻密にパスをつなぎ、果敢にシュートを放つ、いっそう魅力的なチームに作り変えていった。

 今季のプレミアリーグを最も沸かせたチームの一つがブライトンであることに異論は少ないだろう。

 イングランド南岸に位置する瀟洒なリゾートタウンのチームは、シーズン序盤の監督交代から立ち直り、新監督ロベルト・デゼルビの大胆な攻撃サッカーでプレミアリーグ6位をもぎ取った。クラブ史上初のヨーロッパリーグ出場権を獲得し、FAカップでは惜しくも準決勝で敗れはしたものの堂々の戦いぶりで多くのフットボールファンを魅了した。

“Divertendo e divertendosi”

(観る者を楽しませつつ自分たちも楽しむ)

 昨年9月中旬に就任した指揮官デゼルビの求めるサッカーは明快にして痛快だ。

 ボールをつないでゲームの主導権を握り、仕掛けて崩して、相手ゴールを仕留める。ブライトンの新しい攻撃スタイルは本拠地アメックス・スタジアムに熱狂を呼び、リーグに旋風を巻き起こした。

 プレミアリーグに現れた気鋭のイタリア人指揮官は、どうやって“シーガルズ”を飛翔させたのか。

 開幕からわずか1カ月、ブライトンは監督交代という激震に見舞われた。指導4シーズン目に入っていたグレアム・ポッターがチェルシーに引き抜かれ(※その後、'23年4月に解任)、選手たちは悲しみに暮れた。

 ベテランMFアダム・ララーナは、約半年前までシャフタール・ドネツク(ウクライナ)を率いていたという後任のイタリア人が着任した日の戸惑いを述懐する。

「今となっては恥ずかしい話だが、監督としてのロベルトのことを全然知らなかったんだ。変化を受け入れたくない仲間もいた。それでも、監督はここに来てすぐに信念や情熱をこめて、我々に訴えてきた。心に響くものがあった」

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photograph by Getty Images

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