筑波大学での4年間を糧に、プロとしての第一歩を踏み出した2020年。チーム内での激烈な競争、そしてコロナによるリーグ戦の中断――。その全てを乗り越え、なぜ彼は圧倒的な結果を残すことができたのか。ともに戦い続けた先輩と同期の証言から、デビューイヤーの深層を紐解く。
あれほどのインパクトはそうそう見られるものではない。2020年、プロ1年目の三笘薫は、想像を超えるスピードで成長していった。
川崎フロンターレで30試合に出場し、13得点12アシストを記録。J1リーグでは新人最多得点記録に並び、初年度からベストイレブンに選出された。今やプレミアリーグのブライトンの主力として活躍する三笘にとって、川崎フロンターレでの日々は間違いなくキャリアにおいて重要な時間だった。
2020年の川崎は、異質なチームを築き上げていた。それまで軸としてきた「4-2-3-1」のシステムを、この年から「4-3-3」に変更。各ポジションではハイレベルな競争が繰り広げられていた。例を挙げても、最前線ではレアンドロ・ダミアンと小林悠が、中盤は守田英正と田中碧が、最終ラインではジェジエウ、谷口彰悟、車屋紳太郎がしのぎを削っていた。
当時、三笘と同じく大卒新人だった神谷凱士は、川崎のレベルの高さを目の当たりにし、衝撃を受けていた。
「本当に周りのレベルが高くて、練習についていくのがやっとという状態でした。練習から強度も高くて、不甲斐ないプレーをすれば厳しい言葉を掛けられることもありました。それでもオンとオフがちゃんと区切られていて、競争していてもみんな仲が良かった。サッカー選手としてどうあるべきかを学んだ1年でした」
同じく大卒新人として加わっていたイサカゼインも「試合に勝っても内容が悪ければ負けたような雰囲気で、次の日のロッカーで課題を話すことが多かった。結構、異常なぐらいだったと思います」と回顧する。
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