ラグビーW杯フランス大会の開幕まであと100日を切った今、日本代表選手たちが胸に秘める思いとは――。初キャップ獲得からわずか1年半、不動のセンターが明かす“プロ”としての矜持。
2018年、21歳のディラン・ライリーは、決断を迫られていた。
地元のオーストラリアでプロを目指すか。それとも、トライアウト受験に声を掛けてくれた日本のパナソニックワイルドナイツに身を投じるか――。
ライリーは1997年、南アフリカに生まれた。幼少の頃、家族はオーストラリアに移住し、11歳でラグビーを始める。その後、U20オーストラリア代表に選ばれるなど、蕾は膨らんでいった。ところが、なかなかスーパーラグビーのクラブとの契約が結べない。「プロラグビー選手になるのが夢だった」というライリーは、パナソニックからの誘いに乗ることにした。
「とにかく与えられたチャンスを生かそう。そう思ったんだ。お金じゃなく、機会。故郷に残っていれば、家族だって、友だちだって周りにいるわけだし。居心地のいい環境のままいられたと思う。でも、成長のきっかけを得るためには、あえて居心地のいい環境から飛び出すことが必要だと分かっていたんだ。パナソニックでの2週間のトライアル、それは僕にとって人生最大の挑戦だった」
宮崎合宿に合流し、とにかく必死にプレーした。そして見事、プロ契約を勝ち取る。
「本当にホッとしたし、プロになるという自分の夢がかなった瞬間だったね」
パナソニックは、ライリーにとって「お手本」の宝庫でもあり、オーストラリアの大先輩がいた。同じポジションにはキャップ35のディグビー・イオアネ、FLにはキャップ78、代表主将も務めたデービッド・ポーコックがいた。
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photograph by Kiichi Matsumoto