インタビューを終えて、撮影スペースに移動している最中、歩く松田力也を見ていたら、どうも普通の人の歩き方とは違っている。
「左膝をケガしたあと、歩き方を変えたんです。膝に負担をかけないように、つま先で歩くようにしてます」
陸上でいうならフォアフット。いろいろな歩行を試して、ようやくたどりついたフォームだという。
「この歩き方なら、どこまでも歩いていけます(笑)」
松田が前十字靭帯断裂の大ケガを負ったのは、昨季のリーグワン最終節、5月7日に行われたスピアーズ戦だった。開始3分、ボールを持ってステップを切った途端、松田は転倒した。
「膝が内側に動いた感触がありました。自分で歩いてピッチの外には出たんですが、『前十字靭帯、やっちゃったかな……』という不安と、『頼むから無事であってくれ』という思いが交錯していました」
MRI検査の結果は断裂。前年秋のテストマッチ最終戦のスコットランド戦では先発として日本代表の10番を背負い、ワイルドナイツのSOとしても充実ぶりを見せていたというのに……。
「大丈夫。W杯には間に合う」
受傷後、1週間ほどは手術をすべきか、それとも保存療法で治療を進めるのか、悩みに悩んだ。1年4カ月後に控えたフランスW杯に間に合わせるためには、どうするべきなのか……。最終的には、2015年のW杯にエディー・ジャパンのトレーナーとして参加し、堀江翔太や稲垣啓太らの治療に当たってきた佐藤義人氏とも相談し、手術を決断した。
「佐藤さんの『大丈夫。W杯には間に合う。前よりも強くなって戻ろう』という言葉が頼もしかったです。リハビリのために、3カ月ほど京都の実家から車で40分ほどの佐藤さんの治療院まで通いました。リハビリのつらいところは、劇的に回復することはなく、地道にトレーニングに向き合っていくしかないところです。それに佐藤さんのトレーニングメニューがきつくて、きつくて……。たとえば、左膝を無理に動かすことなく、膝の上の筋肉をピンポイントで鍛えるメニューがあったんですが、連日、自分を限界まで追い込みました」
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