ジャックドールの華麗な逃げ切りにばかりスポットライトが当てられたのが大阪杯(4月2日、阪神芝2000m、GI)だった。前半の1000mを58秒9で逃げ、後半を58秒5でまとめた武豊騎手の完璧なペース配分。54歳のレジェンドの妙技が、差し追い込み勢のストロングポイントをなし崩しに削ぎ落としたのがあのレースではなかっただろうか。その分析結果に立ったうえで大阪杯を改めて見直すと、実は一番強い競馬をしていたのは2着のスターズオンアース(牝4歳、父ドゥラメンテ、美浦・高柳瑞樹厩舎)だったことに気がつく。
この馬のスタートが速くないのはいつものことで、この日についても「許容範囲」とC・ルメール騎手は言う。とはいえ、最初のコーナーですぐ外にいたキラーアビリティに押し込められる形になったのは痛手。その結果としてポジションをさらに1列下げさせられたのが、このレースの流れからすると大きなビハインドとなった。その後もかなり長い間キラーに外に張り付かれる形が続いて、さすがのルメール騎手も苛立ちの表情を隠せずにいたほどだ。
3コーナーを過ぎた場面で、軽快に飛ばす先頭との差は6馬身以上。それでも川田将雅騎手のヴェルトライゼンデの追い上げを絶好の先導役として進出を開始し、直線中ほどであっさりパスしたあとは際立った脚を使って伸びたのだが、それでもジャックドールにはハナ差及ばなかったというのが大阪杯の内容。ゴールのほんの寸前でも2番手のダノンザキッドにも届かない3着までの態勢と見えたが、そこからのテレポーテーション的な速さがスターズオンアースの真骨頂だ。上がり34秒4は勝ち馬よりコンマ9秒も速い断然の最速タイムで、さすがは桜花賞、オークスを球際ならぬゴール際の強さで制した2冠馬と唸らされた。
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