あれほど気合いを入れて投げる大谷を見たのは初めてでした。打つほうでもセーフティバントを見せるなど、勝つために最善の選択をし、全力で戦う姿は見ていて気持ちよかった。一発勝負の試合に本気で勝ちにいく、こういう野球が俺はしたかったんだ、という思いを体現しているようでした。
初回から全球、全力投球。3回でバテても仕方ないくらいの力の入れ方だったので、5回途中までよくもったなと思います。
失点する前の段階で継投に入る選択肢もありましたが、ファンもギリギリまで大谷を見たかったでしょうし、次に投げる投手のことを考えても、失点した直後でよかったのかな。誰もが納得するタイミングで出ていくほうが投げやすいですからね。
とはいえ、2点差に詰め寄られた場面で相手の攻撃の流れを切るのはすごく難しい。僕も第1回WBC決勝のキューバ戦で松坂大輔の次に投げましたけど、やっぱり必要以上に力んでしまうんです。
その点、イタリア戦の二番手で投げた伊藤は、強心臓の持ち主で、力んでもパフォーマンスを発揮できるタイプ。「うりゃっ」と声を出しながら全力で腕が振れる投手はこういう場面に向いてるんですよ。所属チームの日本ハムでは主に先発を務めていますが、栗山監督はそのこと以上に彼の特質を見極めたうえで、ワンポイント投入を決めたのだろうと思います。
伊藤の直球には、フォーシームを極めた日本人投手特有の伸びがあります。4番の左打者に対して、真っ直ぐで押し切って内野フライに打ち取れたのは、伊藤らしい強気な投球でした。
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photograph by Naoya Sanuki