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[オフィシャルカメラマンが見た]キューバ「日本化と禁断の一手」

2023/03/23
過去3度、五輪で金メダルを獲得し、2006年の第1回WBCでも決勝に進んだ。そんな「大国」も、今では大きく姿を変えた。オフィシャルカメラマンとして現地の環境と代表チームを知る日本人が、キューバ野球のリアルを綴る。

 なぜ、日本人なのにキューバ代表のオフィシャルカメラマンをしているのか――そう問われたら、「彼らの一生懸命な姿に惚れ込んだから」としか答えようがない。

 筆者が2015年1月に初めて撮影旅行でキューバを訪れたとき、たまたまユリエスキ・グリエル(元DeNA)と遭遇して「お前、日本人か」と親しげに話し掛けられたり、泊まっていたサンティアゴ・デ・クーバの宿の主人が「俺はキンデランと知り合いだ」と言って本当にオレステス・キンデラン(元シダックス)を連れてきてくれたり、日本人というだけで大歓迎を受けた。第1回大会で決勝に進出したWBCの注目度も高く、有名な選手は「イチロー、マツザカ、ワタナベシュンスケ」だった。

 キューバと言えば野球大国のイメージだったが、今はサッカーのレアル・マドリーやバルセロナのシャツを着ている子どもたちも多く、かつて野球で栄華を誇った時代とは違うことが感じられた。

 国内リーグは投手の人材不足のせいか、試合はとにかく打撃戦に。そんななかバントや進塁打も見られ、どことなく日本の野球を感じさせる。元キューバ代表監督のビクトル・メサなど、シダックスに派遣されていた選手の影響が今も残っているという。

 前回大会は2次ラウンドでイスラエルに1対4、日本に5対8、そしてオランダに1対14のコールド負けを喫し、3連敗で大会を去った。主力の多くがMLBを目指して亡命し、キューバに国籍を残して日本でプレーしていたのはアルフレド・デスパイネくらい。このままではいけないと、政府も正規のルートで日本でプレーする選手を増やしてきた。キューバ人にとって、亡命してMLBでプレーする選手はどんなに成功しても裏切り者のままだが、日本でプレーする選手は尊敬の対象だ。

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photograph by Yuki Oboshi

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