自分にとって「原点」と言える一冊は、なんといっても、メジャーで324勝を挙げた名投手が惜しげもなくその秘密を明かしている『ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル』です。
創価大3年の春、東京新大学リーグで連敗し、全日本大学選手権の出場を逃してしまったんです。このままではだめだ、何かを変えなければいけない。そう思っていたところ、ある雑誌でロジャー・クレメンスがこの本に影響を受けたと話していたことを知り、急いで大学の売店で注文しました。
読み進めるうちにインスピレーションを受け、すぐに投球フォームの改造に取り組みました。投球動作のポイントごとに気を付けることが細かく書いてあるので、それを一つ一つ試しながらタオルでシャドウピッチングをやっていく。すると、今までにない腕が振れる感覚が出てきたんです。そこから自分の元のフォームとミックスしながら、ひと夏かけて足を大きく上げる「ライアン投法」を作りあげました。結果はすぐに表れて、秋のリーグ戦では防御率のリーグ記録(0.12)を作り、夢だったプロ入りの道も切り拓くことができました。
投球フォームの他にもトレーニングや食事、カウントの考え方など、この本からは多くのことを学びました。最終章「完全なるピッチャー」にある最後の文章〈完成されたピッチャーと完成した人間は表裏一体のものであるはずだと私は思うのだ。人間として、そして投手として、自分の能力ぎりぎりまでの挑戦を続けていけば、必ず何かを成し遂げられると私は信じているのである〉という一節は、当時から今に至るまで、自分の心に深く刻まれています。
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