見えない恐怖。その見えないはずの白血球の“姿”を初めて見たのは、古典SF映画の傑作「ミクロの決死圏」だった。
重要な機密情報を持つ東側の亡命科学者が襲撃され、そこで負った手術不可能な脳内出血を治療するために、制限時間1時間だけミクロ化された主人公チームが特殊潜航艇で体内に入っていく。子供心にドキドキの連続だったが、何より一番怖かったのは、クライマックスで治療に成功した主人公たちを異物として駆除しようと白血球が襲いかかってくる場面である。
そのとき初めて見たのが白い泡状の白血球だった。映画では裏切り者の敵方スパイが白血球の餌食となって、主人公たちは涙と共に目から脱出成功というハッピーエンド。しかし映画館を出てからしばらく、泡のような白血球の姿が瞼から消えなかった。普段は目に見えないものを見たからこそ、子供心に恐怖が倍増したわけである。
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photograph by Wataru Sato