スポーツと政治は別もの――。いつの頃からかやけに耳につくようになったフレーズだ。
それも東アジア諸国との関係において語られることが多い。本書は鄭大世や安英学、あるいは李忠成といった名を知られた選手を筆頭に、朝鮮半島にルーツを持ち、かつ日本で生まれ育った有名無名のサッカー選手を丹念に追ったノンフィクションだ。
物語は二〇〇五年、埼玉スタジアムで行われたワールドカップ・アジア最終予選、日本対北朝鮮の一戦から始まる。拉致事件や核保有をめぐり、日朝関係は最悪の時期だった。「何か起きるかもしれない」という下品な好奇心を多分に孕みながら、この試合の注目度が異様に高かったことを僕もよく覚えている。
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photograph by Sports Graphic Number