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ライトヘビー級王者が描く、内側から見たボクシング。 ~『カシアス・クレイ』を読む~

2015/08/13

 左フックがアリのあごに決った。アリはそれが決るのを見ていた。アリの首が左側に折れた。百万匹の蟻がアリの身体に入っていく。蟻は入るや否や、身体から抜け出していく。アリは自分の足が崩折れていくのに気が付かない。倒れた。関節は意識ではなく、ただ神経だけで動いている。一秒間が過ぎた…短縮引用だが、迫力ある素晴らしい描写の一端は分かるだろう。1971年3月のモハメド・アリ対フレイザー戦。書いたのは引退後ボクシング記者に転身した元ライトヘビー級チャンピオンのホセ・トレス。膨大な数のアリの評伝、伝記の中で特異な光を放つ本書はチャンピオンがチャンピオンの試合を詳述した稀有の一冊だ。

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photograph by Sports Graphic Number

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