今年1月発売のNumber845号「世界一を獲る!」より、開幕前に錦織選手がBIG4との戦い、世界の頂点について語った記事を特別に公開します!
2013年夏。錦織圭は必死にもがいていた。相手だけでなく、疲れ果てた心や体とも戦っていた。見ているのがつらくなる試合もあった。アンドレアス・セッピに逆転負けしたウィンブルドン3回戦だ。錦織のフォアハンドは完全に崩れていた。ミスを恐れ、安全なボールでただラリーを続けているだけ。腕が縮んでガツンと叩けないから、ボールには伸びも精度もない。そこにつけ込まれた。錦織が得意のフォアを攻められ、ミスを重ねるのは信じられない光景だった。
原因の一つは古傷の左ひざと右足首の痛み。4月のクレーコートシーズンから酷使してきた体は限界に近かったはずだ。それ以上に、精神面がギリギリの状態だった。連戦の疲労、そして世界ランキング・トップ10入りの重圧が重くのしかかっていたのだ。
ウィンブルドン開幕前に11位に浮上した。目標にしてきた10位まであと少し。しかし、自分自身への期待は、たちまちプレッシャーに姿を変えた。7月、8月と不振は続いた。全米は1回戦で敗退。テレビ解説のジョン・マッケンローは「明らかにトップ10入りの重圧だ」と看破した。
'13年の最終ランキングは17位。1年前の19位から2つしか上がっていない。しかし、錦織のシーズンを振り返る言葉は思いのほか前向きだった。11月に東京・有明コロシアムで行なわれたエキシビションマッチの際の会見で、錦織はこう話した。
「もう少しランキングが上で終われたら、という悔いはありましたが、今までになかったことも経験できたので、経験値としてしっかり蓄えています。大きなケガで休むこともなかったので、それも収穫だったと思います」
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