その名の通り、力士を呼び出す。土俵を支える裏方の知られざる仕事事情を、“三役呼出”に聞いた。
独特の節回しで力士の名を呼び上げ、懸賞旗を持って土俵をまわり、結びの一番が終われば太鼓を叩く――取組の進行を司り、相撲における様式美の一端を担うのが、呼出という仕事人だ。目立つ存在ではないが、彼らがいなければ大相撲は成立しない。
九月場所を控えた両国国技館。館内の一角にある相撲教習所で土俵づくりに汗を流す若い衆を見守る次郎さんは“三役呼出”という役職がついたベテランだ。だが、首から手ぬぐいぶら下げて、脚絆に地下足袋をはいたその恰好は相撲関係者というよりは左官である。
稽古総見に向け、教習所の土俵づくりを指揮。
「本場所前に行なう横綱審議委員会の稽古総見はね、この相撲教習所でやるんだわ。稽古総見の数日前に土を掘り起こして、俵を新しいものに入れ替えて、土俵をつくる。呼び上げ、太鼓叩き、土俵づくり。これらが主な仕事で、あとは力士にタオルを渡したり、土俵の砂をはいたり、懸賞旗を持ったりと、土俵まわりの雑務全般も呼出の担当なんですよ」
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photograph by photographs by Satoshi Ashibe