かつてバルセロニスタを熱狂させ、その後決して
円満とは言えない経緯で去っていった“最後の遊び人”。
バルセロナには彼の面影が今も色濃く残っている。
円満とは言えない経緯で去っていった“最後の遊び人”。
バルセロナには彼の面影が今も色濃く残っている。
FCバルセロナはもはや、スポーツクラブというより巨大な企業のようだ。本拠地カンプノウに隣接する、かつての小さな練習場は駐車場に変わり、郊外に大規模なトレーニング施設が造られた。一切の無駄が排された清潔で機能的な事務所は、一流企業のオフィスにいるかのようで少々息がつまってくる。
だが、町役場のような気安さは残されている。事務所の一室で関係者を取材していると突然ドアが開き、テレビや新聞で目にする顔が現われた。第39代会長、サンドロ・ロセイ。副会長時代にロナウジーニョを獲得した人物として知られる、優秀な経営者だ。バルサに空前の成功をもたらした男は興奮気味に捲くし立てた。
「いまの強いバルサの原点は、ロナウジーニョだ。彼のお陰で、バルサは新たな時代の扉を開くことができた。人生には頂点に到達すること、そして頂点に立ち続けるという、ふたつの目的がある。メッシやシャビ、イニエスタが頂点で戦っていられるのも、ロナウジーニョがいたからなんだ。彼はバルサを頂点に引き上げてくれた最大の功労者。そのことを忘れちゃいけない。ロナウジーニョには永遠に感謝しなければいけないんだ」
'03年、掃き溜めのようなバルサにロナウジーニョは舞い降りた。
第39代バルサ会長のロセイ。「改めて振り返ると、二枚目のベッカムではなく、笑顔のロナウジーニョを選んだのが大正解だったね」
いまでは信じられないことだが、2000年代初頭のバルサは無冠続き、会長や監督のクビが次々と飛んでいた。「クラブ以上の存在」であるバルサの不振は、この街の人々を憂鬱にし、怨嗟の声が渦を巻いていた。そんな掃き溜めのようなバルサに'03年、ロナウジーニョは舞い降りた。
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photograph by Toru Morimoto