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新人王候補の澤村、斎藤に負けない!
阪神の左腕・藤原正典、2年目の覚悟。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/16 10:30
リリースポイントの見えにくい投球フォームと、切れ味鋭いストレートを誇る藤原正典。他にもスライダーやフォークを操る
今でも、昨季のセ・リーグ新人王は阪神の西村憲であっても良かったと思っている。
もっとも、新人王を獲得した長野久義(巨人)の選出に疑問があるというわけではない。記者による新人王得票で1票しか投じられなかった西村への評価が不思議でならないというだけの話。もっと評価されるべきだった。
昨季の西村の活躍は阪神にとって不可欠なものだった。
開幕一軍入りを果たし、序盤の久保田智之の不調をカバーしただけでなく、藤川球児ら救援陣の負担を軽減した。中盤までの阪神の好成績の蔭には、西村の獅子奮迅の活躍があった。久保田に次ぐ65試合に登板し、7勝3敗、防御率3.89。疲労の蓄積で終盤に二軍落ちしたとはいえ、見事な数字である。
実際問題、中継ぎ投手の貢献度というのは見えにくい部分がある。
先発ローテーションで回るか、10勝近くを挙げた投手やスタメンに名を連ねて活躍した選手に投票したくなるのも理解できる。ましてや、阪神には藤川球児という絶対的な存在がいるだけに、西村がイマイチ評価されなかったのだろう。
昨今の新人王の傾向では、中継ぎ投手にも大きなチャンスあり!
ここ数年の新人王を振り返ってみると、必ずしも中継ぎ投手陣に陽の目が当たっていないわけでもない。
パ・リーグは、2年連続で中継ぎ投手が新人王を獲得しているし、昨年の得票を見ても、新人王の榊原諒(日ハム)に続いたのは2位の甲藤啓介、3位森福允彦(ともにソフトバンク)ら中継ぎ投手だった。セ・リーグでは'08年の新人王は山口鉄也(巨人)が獲得している。
昨今の傾向は中継ぎ投手陣に大きなチャンスを与えているとも言えるのだ。
そこで、今季の新人王の一人としてその名を挙げたいのが、阪神・藤原正典である。
立命館大から'09年ドラフト2位で入団した藤原は即戦力左腕として期待の高い投手だった。
昨年の春季キャンプ中に初めて藤原の球筋を見た山口高志ピッチングコーチは「(藤川)球児の前で使える素材」と高く評価したほどである。ところが、そのキャンプ中に内転筋筋挫傷で離脱。復帰後に一軍昇格し初勝利を挙げたものの、今度は左肩に違和感を覚え二軍へ降格。その後は一軍に上がることなくシーズンを終えていた。
そんな藤原が今年はキャンプから順調な滑り出しを見せている。