- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
「プロ野球より医者を目指したら?」の声も…“外科医志望のドラフト候補”は指名漏れ、記者に明かしていた進路の話「深夜2時まで受験勉強」
posted2026/10/28 06:01
インタビューに応じた県立千葉・加賀谷一
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Uhyon Cho
昼休みの空き教室。目の前に座るドラフト候補は、理路整然と医師を志す理由を語った。
「スタートは外科医の母の影響です。お金もうけというよりも、やりがいのある、社会に貢献できるような仕事をしたいと思いました。自分も外科医を目指しています。いちばん命にかかわるところだと思うので」
でも、と加賀谷一は続ける。
ADVERTISEMENT
「ずっと医者になりたいとは思っていたんですけど、実際に何をどれくらいやればいいのかは全然わかってなくて。高校に入ったら周りに医学部志望や東大志望がいっぱいいて、これくらい勉強しなきゃいけないんだなって現実を見せられた感じでした」
「優等生キャラ」ではなかった…
入学当初は、勉強も部活も「ほどほどにやればいい」と思っていた。だが、千葉高の生徒たちは目標に対して自分よりもはるかに真剣だった。学業の成績は低迷し、野球部の練習を休むこともあった。
「自分はけっこう、きつかったら逃げちゃう性格なんです。1年のときは練習から逃げていました。勉強との両立にも慣れてなかったですし、冬場のランとかホントきつくて……。真面目に取り組んでいる先輩たちの姿を見たり、先生に厳しく指摘してもらえたことで、ちゃんとやらないと、と思うようになりました。それでも2年までは勉強との両立は全然できていなかったです。最近になってようやく周りに追いついてきました」
きわめて高いレベルでの“両立”であることは留意しなければならない。一方で、黒川健太監督が親しみを込めて「案外、ふざけたやつなんです」というように、どうやら「勉強もスポーツもできる優等生」というキャラクターではないらしい。
「プロ野球より医者目指せば?」の声も…
そんな加賀谷にとって、子どものころからもっとも夢中になれることが野球だった。家族はみな虎党で、阪神戦の中継を見て育った。好きな選手は近本光司。プロ野球選手になりたいと思うことは、医師になりたいと思うのと同じように自然なことだった。
「小さいころに見た憧れが、いまも残っているんだと思います」
屈託も照れもない。なりたいのなら挑戦するまで。プロ志望届を出すことにためらいはなかった。それでもなお、大きなお世話と理解しながらも考えてしまう。プロ野球を目指すことと医学部受験は、両立するものなのだろうか。


