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甲子園の風BACK NUMBER
「プロ野球より医者を目指したら?」の声も…“外科医志望のドラフト候補”は指名漏れ、記者に明かしていた進路の話「深夜2時まで受験勉強」
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byUhyon Cho
posted2026/10/28 06:01
インタビューに応じた県立千葉・加賀谷一
本人が明かした進路
加賀谷の決めた道を周囲の大人たちは否定しなかった。野球部の黒川監督は、千葉高の生徒たちの進路について「先生の側もうるさくいわない。相談されたら答えますけど、基本的に自主性に任せています」と説明する。
「えっ、あなたが? みたいな子でも、とてつもなくいい大学に受かったりするんですよ。勉強に関してはやっぱり積んでいるエンジンが大きいんだろうなって。高い目標を目指しているうちに、気づいたら成長している。そこが面白いところで、期待してしまうところでもあります」
もしドラフトにかかったら、と加賀谷はいった。
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「まずプロにいって、現役が終わったあとに大学に入って医者になろうと思っています」
では、指名されなかったときは?
「医学部に進んで体がなまらないうちに最短で医師免許を取って、そこからまたプロを目指します」
ドラフト会議はあまり楽しみではない、中継も見ない、と加賀谷はいった。そこにはおそらく、冷静に自分の能力を見つめたうえでの諦めがあった。同時に、プロ野球という壁に本気で挑んで負ける体験を求めているようにも思えた。次のチャンスが巡ってきたときに成功する確率を、少しでも高めるために。
ドラフト当日…加賀谷の1日
10月22日の19時30分。プロ野球ドラフト会議は育成指名に入った。予想通りというべきか、支配下で「加賀谷一」の名前が読み上げられることはなかった。
20時20分過ぎ、ソフトバンク以外のすべての球団が育成指名を終えた。ソフトバンクだけが大量指名を続けるものの、加賀谷の名前は呼ばれない。育成15巡目で指名されたのは、福岡県の公立進学校として知られ、今夏の甲子園に出場した東筑高の平山護だった。
20時36分。15巡目の平山を最後に「福岡ソフトバンクホークス、選択終了」の声がドラフト会場に響いた。加賀谷が挑んだ「確率の低い勝負」は、ひとまず確率通りの結末を迎えることになった。その瞬間を、加賀谷は本当に見なかったのだろうか。
ドラフト会議の数日後、黒川監督が教えてくれた。当日、加賀谷は同じ予備校に通う同級生と勉強しながら、生中継を見ていたという。指名の確率がどれほど低くても、やはり無視を決め込むことはできない。18歳の高校生なら当然のことだった。
可能性は低い。期待してはいけない。そう理解していた加賀谷は、20時36分の「選択終了」をどう受け止めたのだろうか。それは本人にしかわからない。だが、どんな感情が去来したとしても、数分後にはふたたび参考書や問題集と向き合っていたはずだ。頭の片隅で、何者かになった自分を思い描きながら。
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