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甲子園の風BACK NUMBER
「あぁ、指名漏れか…」消えた会話→直後に“12球団最後の指名”…東筑ドラフトに密着「予備校から同級生が駆けつけた」ソフトバンク育成15位、涙のウラ側
text by

井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2026/10/27 11:05
スマホで中継を確認しながらドラフト指名を待つ平山護(東筑高校)
先述したように平山は捕手。唯一平山に調査書を求めたソフトバンクは、9人を支配下指名。そこに捕手は一人もいなかった。育成ドラフトに突入しても、6人続けて投手を指名するなど、捕手以外の選手の名が呼ばれていた。
指名継続はソフトバンクのみに…
まだ捕手には望みがある――。
スマートフォンから「育成ドラフトは巨人とソフトバンクで“意地の張り合い”みたいになりますからね」と解説が聞こえた。が、巨人は5巡目で中学生である関蓮太郎を指名し、会場のどよめきを誘うとともにフィニッシュ。オリックスが6巡目で選択終了を告げると、いよいよ指名を続ける球団はソフトバンクのみとなった。
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泰然自若としていた平山も、さすがに落ち着かなくなってきた。ムードメーカー気質の副部長・牧島が緊張をほぐそうと冗談を言っても、表情は柔らかくなり切らず、どこか上の空のように見えた。スマホを握る両手にもギュッと力が入っている。
指名か、選択終了か。ソフトバンクの“一人旅”も14巡目まできた。まだ指名しそうな様子だ。安堵の空気が流れる。
消えた会話「捕手が呼ばれた…」
しかし、アナウンサーの言葉に、場が一瞬、静まった。
「第14巡選択希望選手、村雲脩吾。“捕手”、敦賀気比高校」
「捕手」。ソフトバンクがついに、捕手の選手を指名したのだ。さらに平山と同じく、今夏の甲子園に出場した高校生。ポジションも年齢も重なっている。途端に会話が止まる。グラウンドの空気が張り詰める。
ダメだったか。「選択終了」「ドラフト指名漏れ」の言葉が私の頭をよぎる。
つづく15巡目。指名か、選択終了か。
平山が見つめるスマホから、アナウンサーの声が響く。
育成15巡目、その瞬間
「第15巡選択希望選手、平山護。捕手、東筑高校」
呼ばれた……。その瞬間、平山は全身でガッツポーズをする。そして現実を受け止めるように、視線を地面に落とし、しばし固まった。三塁側ベンチの時計の針は、「8時36分」を指していた。東筑として四半世紀ぶりの高卒プロ野球選手の誕生の瞬間だった。
平山を最後にソフトバンクは「選択終了」。今年のドラフトで指名されたのは、支配下76、育成51人。大トリの“127番目”に吉報が届いた。
「最後の最後やったなあ!」。山下らスタッフ陣と握手を交わした後、平山は父の勝さんに電話をかけた。東筑OBで甲子園経験者の勝さんも、息子の高卒プロへの挑戦を温かく見守ってくれていた。電話で感謝を伝える平山の目は、喜びと感謝でうるんでいた。


