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テニスPRESSBACK NUMBER
「かわいそうっていうか」錦織圭がかつて漏らした“孤独”…コートを去る第一人者がひとり背負った「重さ」とそれでも失わなかった「軽やかさ」
text by

山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byYuki Suenaga
posted2026/10/20 06:20
F・ティアフォーとの現役ラストマッチでの錦織。世界最高のバックハンドをはじめ随所にキレのあるショットも見せたが、敗れて試合内容を悔しがった
ツアーでは12のタイトルを獲得した一方、2014年の全米オープン準優勝のあとも同大会でベスト4が2回、グランドスラム全体ではベスト8が9回、マスターズの準優勝は4回……本当にあと一歩だった。ただ、この数字から、同じ時代に生きた日本のファンが味わった興奮が、いったいどれほど後世に伝わるだろうか。
ファンの熱量と日本国内の事情が相まって、錦織は常に重いものを背負い続けていた。国内で開催されるあらゆるイベントのチケットの売れ行きも、デビスカップの成績も、オリンピックのメダルの数も、テレビ中継の視聴率も、テニス雑誌の売り上げも、果てはフリーランスの仕事の有無まで、全て錦織の肩にかかっていた。
全米オープンの準優勝で日本中が大フィーバーの中、同年代のライバルだったミロシュ・ラオニッチをやはりフルセットで破って遂げたジャパンオープン優勝のシーンは、ハイライト映像からはずせない。あのときコートに仰向けに倒れ込み、勝って初めて泣いたという錦織の堰を切った感情は、「安堵」とか「感無量」などとありふれた言葉では到底表しきれないだろう。
マレーに感じた共感
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かつて4強の一角だったアンディ・マレーがケガによる限界の訪れを告白したとき、イギリスの英雄の立場に微かな共感を口にした。
「ウィンブルドンがあるイギリスのプレッシャーとか、ファンのテニスへの思いは日本よりも大きいと思いますけど、自分もちょっと近いものを感じていました。(マレーは)すごく努力家でもあったし、かわいそうっていうか、悔しさとか、いろんな気持ちがあります」
マレーに「かわいそう」という感情をわずかでも抱いた錦織を、同じように「かわいそう」だと見ていた孤独なエースもどこかの国にいるのだろうか。
それでも錦織はいつも楽しそうに、軽やかに、ナチュラルにテニスをしていた。そう感じさせ続けることができたこと、これもまた錦織の天賦の才だったに違いない。
〈全2回/2回目につづく〉


