甲子園の風BACK NUMBER
「日本刀の上を歩く伝説はもう終わり」公立の古豪を甲子園に復活させた監督はいかに伝統を変えたのか「広島商の常識は当たり前じゃないんだ、って」
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元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph bySankei Shimbun
posted2026/10/13 06:06
今夏まで名門・広島商業を率いた荒谷忠勝監督。公立伝統校を指導する難しさとは
「広島県の方針もあって、入試のやり方が変わり、圧倒的に私立が優勢な状況です。昔に比べると、うちには野球のうまい選手が少ない。
県内を見回すと異常なほどのスカウト合戦が行われているようですけど、うちに来るのは『広商で野球をやりたい』と考える子ですね。推薦入学はないので、一発勝負。早い段階で推薦をもらえる私立に行く選手のほうが多いですね」
しかし、伝統校ならではの強みが広島商業にはある。
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「スカウトをしないからこそ、生徒はみんな横一線。特別扱いを受ける選手はいない。保護者がその部分を理解してくれていることがうちの強みかもしれません。
保護者も含めてですが、『本当に広商で野球をやりたい』という生徒が集まってくれることがうれしいですね。限られた人材でどうやって強豪校に勝つか。決まった戦術ではなく、創意工夫の精神が広商の伝統です」
伝統は重んじるが、変えるべきは変える
広島商業の伝統を重んじているが、それに甘んじるつもりはない。
「広商で鍛えてほしいと考える保護者はいます。野球部は厳しいところだという覚悟を生徒も持っているはずです。僕と年齢の近い広商OBの子どもが何人か野球部にいるんですけど、『息子が毎日、楽しい、楽しいと言うて帰ってくるけど、どういうこと? 俺たちの時代は毎日ピリピリして、どうやって生き残るかと考えとったのに』と言われますよ(笑)」
伝統を重視しながら、変えるべきところは変える。現代流にアップデートすることで古豪は令和に甦った。
21世紀になってから、高校野球では攻撃力を前面に押し出すチームが全国の上位に勝ち進んでいった。5点取られても6点、10点取られたら11点を奪い返す野球だ。「相手に点を与えなければ負けない」という考え方をベースにする守りの野球では勝てなくなった。
「生徒は野球が好きだからこそ、インターネットなどでいろいろな情報を拾ってきます。興味があるからやってみたくなる。バッティングだけでなく、フィールディングについてもそうです。たとえば、ジャンピングスローは派手に見えるのでやりたがりますが、うちではやめてくれと以前は言っていました」
ただ、スライディングキャッチのような、ギリギリのプレーもある。

