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「難しいです、ボクシング」SNSで起きた“敗者・那須川天心叩き”の奇妙さ…拒絶反応の正体を考える「なぜか不機嫌そうだった」試合前にあった“異変” 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2026/10/04 17:06

「難しいです、ボクシング」SNSで起きた“敗者・那須川天心叩き”の奇妙さ…拒絶反応の正体を考える「なぜか不機嫌そうだった」試合前にあった“異変”<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

井上拓真に敗れ、涙を流しながらリングを降りる那須川天心

 微妙なラウンドこそあったが、採点そのものはさほど入り組んでいるわけではない。拓真の勝利に議論の余地はない。それを認めているからこそ、会見で那須川は「難しいです、ボクシング」「実力不足ですね」と反省も口にしている。文字面だけを追えば穏当そのものだ。にもかかわらず、この試合はSNS上を中心に奇妙な論争の対象となった。筆者も少なくない数の“天心叩き”を目にした。

 言わずもがな、那須川はボクサーのなかでは突出した知名度を持つ選手だ。いわゆる有名税のようなものも少なからずあるだろう。しかしそれだけでは説明のつかない激烈な拒絶反応が、世間にはたしかに存在する。いったいなぜか。

 バッシングを受けがちな理由のひとつとして、「那須川天心vs.ボクシング」あるいは「那須川天心vs.井上家」といった構図を提供する選手であることが考えられる。世界の著名なボクサーや格闘家の平均値からみれば、トラッシュトーカーでもビッグマウスでもない。だが今回も前日計量後の囲み取材で「幻想をかき乱す」と口にするなど、「ボクシング界の異物」としての対立軸の提示に関しては意識的であることが窺える。ショーマンシップの範疇での“煽り”にすぎないが、それが気に食わないという向きが存在するのは理解できる。

那須川はずっと“不機嫌”だった

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 また、独自の人生観を持ち、生き方や考え方についての持論を率直に口にするのも、あるいは反発の要因なのかもしれない。それが「浅い」のか「深い」のかを軽率に値踏みすることはできないが、競技とは直接関係のない、どこか抽象的な言動に抵抗感を覚える人間がいても不思議ではない。スポーツ選手の領分(そんな区分けが存在するとは思えないが)を超えている、と見なされている可能性もある。

 もちろんそれ以外にも、さまざまな要因があるのだろう。“格闘技的”なパフォーマンスかもしれないし、SNSの使い方かもしれない。現在の日本ボクシング界が、井上尚弥というあまりにも傑出した「王」を戴く時代であることも大きいと考えられる。だが、個人的な関係があるわけではない平凡な取材者の立場からすると、那須川に悪感情を抱く理由はまったくない。

 囲み取材でも、会見でも、那須川は質問をしっかりと咀嚼したうえで、「那須川天心らしい表現」で言葉を打ち返してくれる。かつて編集者の立場で同席したインタビューでもそうだった。所定の時間をオーバーしたときに、関係者を制して応対してくれることも珍しくない。そこには損得勘定を超えた、目の前にいる人間への配慮やリスペクトがある。リング上での拳の交換というボクシングの本質からすれば取るに足らない話だが、これも一面の事実だ。

【次ページ】 「天心の異変」なぐり書きした取材メモ

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