- #1
- #2
NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「とにかくバネバネしてる(笑)」前マラソン日本記録保持者も驚いた《APEX》は魔法のシューズか…開発過程を直撃取材「2層のエアが出発点」
text by

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byKensaku Wakui
posted2026/10/01 09:46
NIKEの新作シューズ「APEX」を構成するパーツ
答えはFEA(Finite element analysis)、日本語にすると「有限要素解析」。つまりコンピューター上のシミュレーションであり、それを何十万回と繰り返したという。かなりマニアックだが、現在のシューズ開発の最先端が垣間見える詳細な解説だったので、紹介したい。
「FEAテストの初期と完成形で最も大きく変わったのは、フォーム、プレート、エアというAPEXの各構成要素の『比率』と『配置』で、それは『バランス』とも言い換えられる。私がNIKEのシューズ最大の強みだと感じているのは、市場にある他のどのシューズよりもチューニングできる要素が多いことなんだ」
「プレートの形状やフォームの圧縮率、スタックハイトの比率を変えられるのはもちろん、プレートとエアバッグの相互作用を変えたりできるし、エア内部の気圧を変えることができる。つまりNIKEのレーシングシューズは開発における『変数』がとても多い、ということだね。
ADVERTISEMENT
変数が多く、それらが複雑に絡み合うからこそ、1つの要素を変えたときに他へどう影響するかを全て物理的に作って試すのは時間がかかりすぎる。シミュレーション(FEA)を使うことで、数多くの仮説をテストし、最も効果的と思われるものに絞り込んでから、実際の物理的なサンプルを作って検証することができたんだ」
NIKEには予測ツールや予測モデルがいくつもあり、APEX以外のシューズ、つまりアルファフライやヴェイパーフライの開発テストにも使われているという。シューズ開発は、職人の世界からAIなども使ったデータとシミュレーションの世界に完全に切り替わっていることを象徴する話だと感じた。
ビックマックのような2層構造の由来は?
そして3つ目は最大の注目点であるズームエアだ。片足に4つも搭載されたエアは外見的にも大きなインパクトがある。
「ビックマックのような2層構造という発想は、いつ、どこで生まれたのか」
そう質問をすると、APEXの開発自体が、驚異的な推進力を生む“ダブルスタック エア”をどう使いこなすか、という課題から出発したのだという。
「このアイディアは7、8年前からNIKEの中にあったけど、Alphaflyを進化させていく中で、このダブルスタック エアを最初に試すレーシングモデルとしてはAlphaflyは適切ではないと感じたんだ。そこから『Alphaflyの先にあるAPEX』というアイデアが生まれた」
開発チームはあらゆることをテストしたという。2層にするのではなく、超分厚いエアを1つ入れるアイディアも試したというが「安定性の面で2層を採用した」という。
今回はズームエアのポッド自体が新しくなっている。これまでは熱成形で作られていたが、音と振動を利用したRFと呼ばれる技術で成形。これにより今までより30%以上軽く、しかも柔らかくなったのだという(APEXのエアは先に発表されたAlphafly4に搭載されたものとは微妙に違うらしい)。
Alphaflyシリーズとは違う感触
実際に走ってみた上で個人的に感じたのは、このエアポッドの「柔らかさ」がランナーにとってAPEX最大の長所になっているということだ。


