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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「那須川天心は喧嘩で勝ってボクシングで負けた」元世界王者が間近で見た天心の誤算と井上拓真のスキ「天心の逆転もあるかと思ったけれど…」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byNaoki Fukuda
posted2026/10/02 12:10
元世界王者の伊藤雅雪氏が特等席で見た決戦の内幕。天心が「ボクシングで負けた」という意味は……?
大きなヤマ場となったラウンドには、王者としてのプライドが垣間見えた。たとえ、挑戦者の土俵であっても、すべて上回っていることを示したかったのではないか。伊藤はそこにスキが生まれたという。
「拓真は6ラウンド後半から押されている感じでしたが、打ち合いでも天心に勝てると思ったんでしょうね。そこで捕まってしまった」
ダウン直後はロープ際で上体を動かすディフェンスで対応していたが、それほどの余裕は見えなかった。むしろ、伊藤はヒヤヒヤしながら眺めていた。あと一発でも致命打をもらえば、そのまま試合が終わってしまう可能性さえ感じた。
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「井上サイドから見れば、危険な雰囲気はありましたよ。正直、僕はクリンチでも良かったんじゃないかな、と思いました。天心はチャンスでしたけど、強引に行けば行くほど、倒しきれないもの。そもそもパンチャーではないですから。タイミングで倒すタイプなので。相手を誘うような駆け引きがあれば、もう一度倒してフィニッシュできたかもしれませんね。あのラウンドに関しては、拓真の反応は鈍かったので」
天心ペースから立て直した拓真はさすが
序盤は井上だったが、中盤にペースを握ったのは那須川。スコアシートを見ると、8ラウンドは王者についているが、伊藤の感覚ではまだ挑戦者のペースだった。終盤も主導権を握り、7ラウンドのような打ち合いの場面を多くつくれれば、逆転のシナリオもあると思えた。8回終了時に読み上げられたスコアのアナウンスを聞き、リングサイドで「まだ3ポイントも離れているのか」とつぶやいた。ジャッジ2者は井上の77-74、1者は那須川の76-75。
「あの時点ではドローに近いくらいの印象だったので。僕はこの展開のまま試合が進んで、天心が逆転するかもしれないと思いましたけど、そこからの拓真の立て直しはさすがでした。これが歴戦の経験、キャリアなのかなって」
伊藤がとくに目を引かれたのは、相手にボクシングをさせない心憎いほどの防御テクニックだ。勝敗のカギを握った技術と言ってもいいだろう。

