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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「那須川天心は喧嘩で勝ってボクシングで負けた」元世界王者が間近で見た天心の誤算と井上拓真のスキ「天心の逆転もあるかと思ったけれど…」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byNaoki Fukuda
posted2026/10/02 12:10
元世界王者の伊藤雅雪氏が特等席で見た決戦の内幕。天心が「ボクシングで負けた」という意味は……?
伊藤が首をかしげたのは、那須川陣営がポイントを読み違えていたことだ。ポイントでリードしていると踏んでいた担当の葛西裕一トレーナーは4回終了時の公開採点を聞き、驚きを隠せなかった。ジャッジ3者のスコア内訳は40-36、39-37、38-38となり、井上の2-0。セコンドの想定とは逆だったのだ。
「天心は見合う時間が長かった。挑戦者らしく行く必要があったんじゃないのかなって。やっぱり、アグレッシブさが足りない。さすがにあの前半の戦い方では、ポイントでリードできないと思いますね」
公開採点直後の5ラウンドは注目していたが、先に仕掛けたのは井上だった。ラウンド内の見せ場のつくり方も心得ている。出だしで印象づける攻撃を繰り出し、インターバルに入る間際になると、ギアを上げてポイントをピックアップしていた。
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「拓真は出入りの駆け引きがうまい。天心からすれば、まともにパンチをもらってないので、ポイントは取られてないよ、と思っていたのかもしれないですね」
拓真のダウンは、効いていたように見えた
試合の流れに変化が見えたのは、6ラウンドの後半から。強引だったかもしれないが、那須川は覚悟を決めて前へ出ているようだった。ようやく伊藤の待っていた展開が訪れ、近い距離でパンチが交差すると、見方も変わっていく。
「やっぱり、一瞬で避けて、パンチを打って、引く動作は天心の方が速い。天心は出入りではないんですよ。近い距離でも見切ることができる。パンチを見る目が、すごくいいんだと思います」
7回もラウンドの最初から距離を詰めて、打ち合いに持ち込んだ。那須川にとって好都合だったのは、相手が応戦してくれたこと。両者のパンチが飛び交うなか、互いのクリーンヒットはなく、一瞬だけ間ができた。チャンピオンがニヤリと笑った次の瞬間だった。きれいに伸びた那須川の左ストレートが井上の顔面を捉えた。
「近くで見た僕の目には、効いているように見えました。バランスを崩して、パンチに押される形で尻もちをつきましたが、フラッシュダウン(ダメージの少ないダウン)の倒れ方ではなかったと思います。アゴは天心に比べると、拓真の方が弱いのかなって」

