博多の人・王貞治BACK NUMBER
「今から、開幕投手は断ってくるから」王ホークスで“強運の男”が3年連続開幕に選ばれた意外な真相「最初に言われたのは監督じゃなくて…」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2026/09/29 11:06
ヤクルト、ダイエーで通算5回開幕投手を務めた西村龍次。ホークスで開幕に指名された意外な経緯とは?
「工藤さんが、キャンプ中盤くらいだったかな? 要はふくらはぎを痛めたんです。その時から工藤さんに『俺、ちょっと開幕は無理。お前って言われるから準備しとけ』ってキャンプの中盤に言われていたんですよ。王監督じゃなくて、工藤さんに言われていたんです」
それまでの王ダイエーの4シーズンの開幕投手は、1995、96年が工藤公康、97年は武田一浩、98年が再び工藤。過去の実績やネームバリューを考えれば、当然ながら99年も工藤が大本命。「開幕=工藤」というのは、それこそチーム内のみならず、他球団の見立ても、プロ野球ファンの予想も、すべてがそう。もはや暗黙の了解に近いものでもあった。
だから工藤は、自らの異変を察知し、調整が遅れると自覚した時点で“次候補”の西村にあらかじめ、バトンタッチを予告していたというわけだ。
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「いきなりだったら、慌てるからということなんです。要は『俺が断るから、そうするとお前って言ってくるから』って。でもその間も工藤さん、走ってるし、投げてるし、だから『いやいや、工藤さん、やって下さいよ』って。その会話のラリーが何回かありました」
今から、開幕投手は断ってくるから
本当に、自分に「開幕」が回ってくるのか?
どこか、落ち着かない気持ちを抱えながら、3月のオープン戦も終盤に近づいていた。
西村の記憶では、ビジターの神宮球場だったという。外野両翼のポール間を走る、きつめのランニングのメニューに取り組んでいた西村のもとに、工藤がひっそりと近寄って来た。
「今から、開幕投手は断ってくる。断ったら、お前って言われるからな」
そう言い残した工藤は、すたすたと三塁側ベンチ奥へと姿を消した。

