濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
山本美憂(52歳)人生初の“圧巻KO劇”はなぜ生まれたか? ボクシング日本デビュー戦で奪った“2度のダウン”の真相「あんな倒し方ができる女子選手は…」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2026/09/23 17:04
9月15日、田口智香から2度のダウンを奪い勝利した山本美憂
美憂を長く見ているカメラマンの長尾迪氏は、当日のリングチェックの様子を見て「動きが硬かったね。緊張もあるんだろうね」と言っていた。実際、試合が始まると田口智香(花形ジム)に先手を取られる場面が目立つ。セコンドからは「リラックスリラックス」の声。
だが2ラウンドから徐々に修正していく。手数では劣るがパンチングパワーは明らかに上。3ラウンドになると闘い方がはっきりと変わった。
「パンチをかわすのではなく、ブロックしてから打ち返してもいい」
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長谷川会長の指示で、ガードを高く掲げて前に出る。相手が距離を詰めてきたところにパンチが当たるようになった。左フック一発でダウンを奪うと、ロープに詰めて左から右へのコンビネーション。田口は腰から崩れ落ち、レフェリーが試合を止めた。3ラウンド1分51秒、TKO勝ち。日本における最年長勝利、最年長KOということになる。美憂にとっては格闘技人生初のKO勝利だった。会場には、MMAファイターの浜崎朱加も応援に来ていた。その事実も、美憂が残した確かな足跡と言っていいだろう。
勝利した美憂は、涙を浮かべていた
「夢のようです。たくさんの人が動いてくれて、ようやくリングに立つことができました」
リング上での勝利者インタビュー。美憂はそう言って目に涙を浮かべた。ファイトキャンプでは女子選手とのスパーリングも数多くこなした。協力してくれる人たちがいるからこその試合、感謝の気持ちを噛み締めた。
長谷川会長からは「練習してきたことを出そうとしなくていい。試合はスパーリングとは違うから」と言われていたそうだ。国内デビュー戦、“格闘技の聖地”での試合で、仲間が見ているからこそ「緊張すると思います」と計量後に語っていた。ただ「それが私には必要なことなので」とも。自信が油断につながるよりも、細心の注意につながる緊張のほうが大事だったのだろう。
こうした感覚も、長いキャリアのなせる業ではないか。試合中の修正能力、太い腕に象徴されるフィジカル、それに勝負度胸。ある記者は「あんな倒し方ができる女子選手はほとんどいない」と本人に伝えていた。



